格安サービスのポリシー

  先日、あるテレビ局の報道番組で、「5分100円」で種々の雑用を引き受けるというサービス事業が紹介されていました。昔懐かしい「御用聞き」という文字入りの前掛けをかけて個人宅を訪問し、電球の取り替え、小型家具の組み立て、掃除などの仕事を請け負って遂行するというものです。

 

  果たして5分100円で採算がとれるのか・・・と気になるところですが、若干グレードの高い業務もあり、「5分100円」の御用聞きサービスで知名度や信頼度が高められて、長時間利用やより高額のサービスの受注が増えたようです。みごとに黒字営業となり、新たに人を雇い入れる予定もあると報じられていました。

この事業者さん(法人のようです)について感心したのは、

 たとえわずかであっても、サービスを提供したことに対する対価を請求する

という姿勢です。

 行政サービスや行政からの委託を受けているものならばいざ知らず、100%民間の事業であれば、対価を請求するのが当然。

 御用聞きサービスを利用した方々へのインタビューでも、「お金を払うことで安心した」「無料だったら利用しなかった」というような声が拾われていました。

 

 しかし、う~ん、どうなんでしょう・・・?

 ひねくれ者の私は、素直に納得できませんでした。

 

 スマホアプリやクラウドのストレージサービスをはじめとして、無料で利用できる便利なものがあふれ、「無料慣れ」が進んでいる時代です。

 「5分くらい勉強してえな!」(勉強とは割引を意味します。つまり「5分くらいならタダでやってよ」というイミです)という人が多そうな大阪の地にいるせいかもしれませんが、ささやかな対価を請求したことだけで信頼を獲得できたとは思えません。

 一定の時間まで無料または割引で利用できるクーポン券を配るとか、初回を無料にするというような方法で、サービスの質を確かめていただこうという趣旨の取り組みは、多くの事業者がやっていることです。よほどのうさんくささが感じられない限り、それである程度の集客ができるでしょうし、お試し利用で信頼や評判が高まり、永続性のあるお客様を獲得する可能性もあると思います。

 

 そういう方法をとらずに、あえて「5分間100円」というプランを打ち出したのは、営業目線からのアプローチではなく、お客様の立場をふまえて利用しやすさを追求した結果、そうなったのではないか・・? と感じます。

 ちょっとした用事を頼める人がいなくて困っている人たち(主に高齢者)が、過度の金銭的負担を感じることなく、いつでも何度でも低価格で利用できる恒久的サービスにしよう、という想いが、この5分間100円のビジネスの原動力ではないでしょうか。

 

 報酬をいただくことで、どんな小さな仕事でも責任をもって遂行する

 困っている方々がずっと利用していただけるように、必ず収益をあげて事業を持続させる

 

 そのようなポリシーなしに、単に格安のサービスメニューを設定しても、人々からの信頼を得るのは難しく、長続きはしないだろうと思います。

 もちろん理念だけ立派でもダメでしょうね。収益をあげるための仕組みも時間をかけて組み立てられたのだろうと思います。

  小さなことの積み重ねでも、責任をもって遂行することで、大きな信頼を獲得することができる……(^.^)

 御用聞きサービスに限らず、どんな業種のビジネスにも言えることですね。

 

 もちろん弊社のようなコンサルティングサービス業にも。

 お客様から頂戴する報酬の大小に関係なく、報酬をいただくことにより発生する責任を意識して、しっかり取り組まなければ。

 弊社でも、「知財よろず相談」というサービスの初回のご利用を無料で提供しています。

 弊社がお役に立てるかどうかを判断していただこう、という「お試し利用」としての位置づけですが、それだけでなく、

専門家に相談したいが相談料のことが心配で二の足を踏んでいる」という方々のお役に立ちたいという想いから打ち出したものです。

 

 どうか「無料だと信頼性に問題が・・・」などとお考えにならずに、お気軽にお声かけ下さいね。

 

株式会社知財アシスト

代表取締役 小石川 由紀乃 (弁理士)

小石川由紀乃 プロフィール

 理系出身者が圧倒的多数を占める弁理士業界において、大学で神経生理学や心理学を専攻した後、百貨店の書籍部門での勤務などを経て知財の世界に足を踏み入れた少し変わり種の弁理士。

 特許事務所勤務の傍ら、独学に近い無手勝流の受験勉強を経て、2005年に弁理士試験に合格。当初は、与えられた仕事をするだけのひきこもりタイプの勤務弁理士であったが、あるとき意を決して、外部との交流や情報発信などの活動を始める。

 中小企業のクライアントが多い特許事務所に長く勤務して見聞きした実情をふまえ、自分なりにできることをしようと、2013年に知的財産に関する専門部署を持たない企業に向けた知財サービスを提供する事業所:知財サポートルームささら(現・ささら知財事務所)を開設。

 より充実したサービスの提供を目指して、2015年8月に株式会社知財アシストを設立し、代表取締役に就任。